事例 ID
73
発生年月日
1984/12/02
事故名称
ボパールでのイソシアン酸メチル漏洩事故
発生時刻
23 時
発生国
インド
地名
マッディヤプラデーシュ / ボパール
化学工業
非着火放出 / 漏洩(大気)
人的被害
死者数 負傷者数 中毒者数 不快被害者数
2,000名以上 200,000名以上    

環境 / 大気汚染

環境 / 土壌汚染

物損 / 農業・牧畜 / 家畜

物損 / 機器 / 事故機器

被害金額
48600万ドル
事故概要
殺虫剤カルバリル製造工場で猛毒のイソシアン酸メチル(MIC)が大量に漏洩した。事故原因は装置の不適切な洗浄操作のためMICタンクに大量の水が混入し,微量混入した水を除去するためにMICに添加しているホスゲンと水との反応でHClが発生した。本来ステンレス製であるべきパイプが鉄製であったために,この鉄パイプとHClとが反応しFeCl3を発生させ,これが触媒となってMICの重合反応を引き起こし,タンク内の圧力が上昇,安全弁が破損,ガスが漏洩した。中和装置等の安全装置は適切に作動しなかった。推定死亡者2,000名以上,負傷者20万名以上となった。
環境条件
天候 気温 (℃) 風向き 風速 (m/s)
14 北西
貯蔵 / 液体貯蔵 / タンク(固定式)
貯槽・ボンベ / 液体貯槽
組織要因 / 設計ミス / 事前評価不足 組織要因 / 安全管理不備 / 組織体制の欠陥 物質・反応要因 / 自己反応 / 重縮合 人的要因 / 不適切な行動・操作 / 操作・作業ミス 組織要因 / 安全管理不備 / 管理手法ミス 設備・装置要因 / 機器不良 / 機能不良・喪失 人的要因 / 不適切な行動・操作 / 判断・決定のミス 物質・反応要因 / 混合系反応 / 不純物との接触による反応 外部要因 / ユーティリティ停止 組織要因 / 設計ミス / 設備設計ミス 組織要因 / 設計ミス / 条件設定ミス
関連物質
二塩化カルボニル イソシアン酸メチル 塩化水素 塩化鉄(iii)
対応
(1)MICプラントからのガスの漏洩で被害が出始めたとき,警察に適切な情報を提供できなかった。
(2)ガス漏洩が始まっていたにもかかわらず,警報サイレンを鳴らさなかった。鳴らされたサイレンはすぐに止められてしまった。ほとんどすべてのガスが漏洩し,安全バルブがリセットされた後になって再びサイレンは鳴らされた。
(3)オペレーターはMICタンクの圧力上昇が異常事態の発生の為に起こっているとは考えなかった。
(4)圧力上昇時に圧力を降下させる目的で一つの空のタンクが設置されていたが,オペレーターはこのタンクのバルブを開放しなかった。
(5)ガスが漏洩した際,オペレーターはこれを重大視しなかった。
(6)プラントで働いていた人々は漏洩が始まったとき,ただちに責任者に知らせなかった。漏洩が日曜日の晩に起こったため、漏洩の重大さを理解できる者は誰もいなかった。
(7)MICの大量貯蔵は旧西ドイツおよびオランダ等で許可されていない。他国の状況を的確に判断していなかった。
教訓
・洗浄水は潜り込む:洗浄水はしばしば予期せぬ場所に流れ込む。禁水性物質を扱うプラントでは洗浄作業を安易に行うことなくラインの遮断を確実に行う。
・コストと一緒に安全を切るな:安全対策は固定費用と考え,コスト削減で可変費用にしてはいけない。安全設備は常時稼働できるようにしておかなければならない。
・コストと一緒に経験を切るな:熟練者の経験はコストに置き換えることはできない。
・適材なけば適所はない:コスト削減で教育訓練が不足していては,小手先の人事異動では安全な運転はできない。
主な出典
日本損害保険協会編, 世界の重大災害, 日本損害保険協会, pp.60-63(1997), 安全工学.vol27, pp.346-354(1987)
付帯情報
フロー図
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*) 人的被害を除く